


ルーン文字とルーン詩の旅路
ルーン文字の神秘的な意味や、その起源はどこにあるのでしょうか?
最初の文字である『フェオ』が「家畜」から「富」や「循環」へと意味を広げたように、ルーン文字の深い知恵は、ある「詩」の中に隠されています。
今回は、古代ゲルマンのルーン詩が語る、文字の秘密を紐解いていきます。
ルーン文字の起源
ルーン文字の登場は、紀元2世紀頃と言われています。 フェニキア文字やローマ文字の影響を受けながら、ゲルマン人たちは独自の記号体系を生み出しました。 それが「古フサルク(エルダーフサルク)」と呼ばれる、最も古いルーン文字です。 この文字は、武器や装飾品、墓石などに刻まれ、 祈りや名前、そして「力」を宿すものとして魔術的な意味合いで使われていました。
その後、ゲルマン民族がヨーロッパ各地へと移動する中で、ルーン文字は北欧、ブリテン島、中央ヨーロッパへと広がっていきます。 やがて土地ごとに文字の形や数が変化し、「新フサルク(ヤンガーフサルク)」や「アングロサクソン・フサルク」など、地域に根ざしたルーン体系が誕生しました。
ルーン詩:文字という記号から、詩へ
やがてルーン文字が広がるにつれ、それぞれの文字に込められた意味や象徴を「詩」のかたちで語り継ぐ文化が生まれます。
アングロサクソンの人々は、口承で伝えてきたルーンの知識を詩のかたちで書き残しました。10世紀末から11世紀初頭にアングロサクソン・ルーン詩はイングランドの写本に記録されています。
当時はキリスト教が広まり、古くからの信仰や象徴体系が姿を消しつつありました。
そうした中で、修道士や書記たちの手によってルーンにまつわる詩が写し取られ、後世に伝えられることになったのです。
これらの詩はルーンの一文字一文字に寓意を与え、「財産」「馬」「松明」などの象徴を通して、古代の価値観や世界観を伝える役割を果たしています。
文字という記号に、詩のかたちで「情景」を与えたもの。それがルーン詩です。
ルーン占いと、ルーン詩のつながり
現代のルーン占いがこの詩を重視するのには、いくつか理由があります。
ルーン詩はルーン文字の解説書
ルーン文字は墓石や武器などに刻まれていますが、それぞれの意味を体系的に解説した文献はほとんど残っていません。
けれど、ルーン詩では文字に込められている象徴や概念が「言葉」で説明されています。これは、数少ない解説資料のひとつといえるものです。
例えば、『フェオ』には「家畜」という意味がありますが、アングロサクソン・ルーン詩は『フェオ』についてこう語っています。
『富(フェオ)はすべての人にとって慰め。けれど主の前で栄光を得たいのであれば、だれもが惜しみなく分け与えなければならない』
「家畜」という意味だけでは伝わりにくかった部分が、詩になることで、それが持つ力やイメージを伝えやすくしています。詩の持つこの象徴は、占いにおいてはキーワードというかたちで採用されています。
ルーン詩は古代の価値観が映し出されたもの
先に見た「富」のルーンである『フェオ』の詩には
「財産はすべての人にとって慰めであるから、だれもが惜しみなく分け与えなければならない」
というようなことが書かれています。
これは「富とは独占するものではなく、分け与え広げてゆくもの」という視点です。
ルーン詩には古代の価値観も含まれており、現代のルーン解釈にも大きな影響を与えています。
詩が直観的に作用する
占いにおいての解釈は、ひとつに決められるものではありません。
読み手がどう読むか、どう感じるかが大切な鍵になります。
タロットも「キーワード」を頼りに占うものですが、それよりも重要なのは鮮やかな「絵柄」から得られるインスピレーションです。カードのもつ絵柄が物語となり、深層心理に語りかけ、問いの答えを誘い出します。
ルーン占いの場合、基本的に絵柄はありません。あるのは「文字」と「意味」のみです。
そのため占いで『フェオ』がでて、その意味が「家畜」や「富」だと分かっても、そこから問いの答えにたどり着くのは難しいと思います。キーワードだけ覚えても、柔軟な回答を得るには限界がありそうです。
けれど、ルーン詩を知っていれば、意味のはばを広げて深い解釈につなげることが出来ます。
ルーン詩はタロットでいう「絵柄」です。詩が「文字」と「意味」に「情景」を与えます。
情景は感覚や感性にふれるので、直観に作用しやすくなります。情景が物語になれば、創造性も高まってより深い洞察が可能になります。
ルーン詩は、問いの答えを引き出しやすくしてくれる装置になり得るものなのです。
まとめ
アングロサクソン・ルーン詩は、ルーンの象徴する意味を詩の形式で表現した貴重な文献です。これは単なる記録ではなく、詩のかたちで残された、古の知恵と文化の結晶と言えます。
このルーン詩が現代に残されているおかげで、私たちはルーンの象徴の深い意味合いを感じ取ることができます。ルーン占いに触れる際、この詩の背景を少し知るだけで、一つひとつの言葉が持つ本質を理解できるようになります。解釈する力は格段に深まり、ルーンのメッセージはより強く、生き生きと心に響くものになっていくと思います。

